花房観音 -Hanabusa Kannon-

情交未遂

あなたの話を聞きたい、あなたのことを知りたい、誰も知らないあなたを、私の言葉で書き残したいーー言葉でまぐわいたいのです

弁護士・タレント 角田龍平 ~少年は龍になった~ (2012年)

2016年9月19日   インタビュー:花房観音   写真:花房観音   場所:哲学の道にて

 

――中学に入ってからは?

 

「プロレスが好きだから、大阪スポーツを毎日読むようになったんですね。そこに睦月影郎先生の官能小説とかが載っていて、ちょっと下腹部に変化を感じました。友達にオナニーの話を聞いて試みたんですけど、カウパー氏腺液が出た時に、それが射精だと思ってやめたぐらいです。何が気持ちええんかわからんかった。だからオナニーも遅かったですよ」

 

――中高と男子校だったわけですが、女性との交流はありました?

 

「刑事裁判の有罪率は99%なんですけれど、うちの学校の童貞率は多分それ以上でした。でも派手なグループはいましたね。これみよがしに女子高と遊びにいくやつらは。遊びに行くといっても新京極(京都の繁華街)でボーリングしてロッテリア行くとかその程度なんですけど。僕らはそいつらをチャラチャラしてるから『チャラ―ズ』と呼んでて、悔しがりながらも計画を聞き出してボーリング場に先回りして邪魔をするなんてことをしてました」

 

――洛星なんて、カトリックの男子校で、進学校やし人気ありそうなのに。

 

「もやしっ子の集まりなので、ゲーセンでカツアゲに何回あったことか。文化祭とかも閑古鳥。東山、大谷、平安高校とかが人気ありました」

 

――女の人とのおつきあいは何人ぐらいと?

 

「ジェームス三木みたいに『春の歩み』をつけなくても、名前も具合もみんな明確に記憶できる程度の人数としかお付き合いしていません」

 

――ノーマルですか。

 

「ノーマルなことにコンプレックスがあるんですよ。花房さんの『花祀り』とか読んで、妄想力すごいな、って」

 

――あれは変態が何人も出てきますしね。

 

「あれ読んで、横綱と新弟子やなと。僕が四股名もついてない新弟子なんです、中学生の発想しかない。でも官能小説って大事ですよね、一番国語力や読解力を要するジャンルだと思うんです。女の人の方が男より想像力がありますよ」

 

――男は身体の仕組みも単純で、出して終わり、みたいな。

 

「射精したあとの虚無感てすごいですよ。実家帰ってお母ちゃんの味噌汁とか飲みたくなる。男は女に比べれば可愛いもんですよ。男同士で、女をどんだけイかしたかみたいな話になって、イかせ自慢してたやつが、クリトリスの位置を知らなかったり」

 

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「エロは大事だと思うんですよ。僕の経験則から言うと、性犯罪を起こしちゃう人は、エロい話を言う仲間がいないような気がします、なんとなく。普段からそういう話するのって大事で、そういう仲間がいたらしないと思う。そういうことが言えない環境、閉鎖的な家庭の人の方が性犯罪は多いと思うんですね。大人でも『花祀り』みたいに開放できる場所があれば、犯罪に走らないと思います」

 

――抑圧されるのが、一番危険ですよね。犯罪にまで走らなくても、性的にむちゃする人って、子供の頃、すごい性に抑圧的な環境の人が多いように私も思います。私自身が、こうしてエロを書くようになったのも、人一倍抑圧してきたからです。

 

「僕は竹内さんと会ったら、アホなエロ話しかしないんですけど、想像力という意味では発散できてます。SPAで、みうらじゅんさんとリリー・フランキーさんがエロ話の連載をしてるけど、あの人たちが性犯罪起こすって、絶対ないと思うんですよ。だからこそ性的な表現の規制はよくないと思う。想像力を抑え込むのは。性的な想像力をたくましくして話し合う場というのは男の子っていうのはないとダメだと思います。性的な表現を規制する方向に行きがちで、すぐにそれが性犯罪との因果関係があるみたいに言われちゃうけど、果たしてそのデータとかもないし。AVとかで救われてる人もいると思うんです」

 

――それはいますね。AVでオナニーすることによって、解消されたり、自分の性癖を冷静に客観視できたりというのはあると思うんですよ。

 

「僕が高校の時に、有害図書指定騒動がありました」

 

――ありましたね。山本直樹さんの漫画とか。

 

「高校の文化祭で、それはいかがなものか、有害図書規制について考えるって展示をやったんです。京都には条例があって、それは女性の府会議員が先導してつくったものだった。だからその府会議員にアポとったんです。向こうは、僕ら洛星やから、ええこちゃんやと思ってるし、規制に賛成の子が来ると思ってたんですね。でも実際に会うと、僕らは規制反対派で、いろいろおかしいことにつっ込むんです。だってその府会議員は、規制の対象物を読んでもいないしタイトルも知らない。世の中にそんなものが出回っているらしいという伝聞だけで条例を作ったんです。読まなくてもわかるって言うんですね、それらの本のせいで、読んでる子がとんでもないことになってるって、近所の奥さんから苦情が来たとか。子供が暗号でいやらしいことをやりあってるとか言うから、何でその奥さんは暗号が解読できたのかと突っ込むと、『帰れ!』って怒鳴られました。おかしいなって思いましたよ。規制するときは具体的に原因と害悪の因果関係が明らかにしなあかんはずやのに」

 

――私、前に偶然mixiで発見したんですけど、元AV女優で特撮物とかに出ている方がいて……その人のアンチコミュがあるんですね。元AV女優が、子供の見るテレビに出演してるのが許せない! みたいな。そこで母親らしき人たちが盛り上がってるのを見て、なんかそこで怒るのは違うんやないかなと思ったんです。

 

「性的なことに過剰に目くじら立てる人、いますよね」

 

――AV女優アンチの人って、嫉妬もあるんちゃうかな、と。女の人って、夫がAV持ってたら怒る人、結構いますもん。自分以外の女に性欲を抱かれるのが嫌って。角田さんはAVは見ます?

 

「妻の実家に住んでいるとさすがにAVは見なくなりますね。サザエさんでもマスオさんが信長書店に出入りしている描写はないですもんね。エロ雑誌は好きですよ。最後にお風呂に入ることが多いので、風呂入りながら読むんですが、風呂で読むと雑誌が湿って、小学校の頃、なぜか雨の日の翌日に通学路に落ちていたあの頃のエロ本っぽくなってノスタルジーに浸れるんです。エロ本といえば、カトリックの中学校だけど仏教好きな先生がいて、比叡山に合宿に行って座禅を組んだことがあるんです。その前日に、『URECCO』っていうエロ本を買ったばっかりで、座禅組んでもそのことばっかり考えてたのに、座禅を見てくれていた高僧になぜか『君は邪念がない無我の境地だ』とか褒められたことがありましたね。邪念だらけやっちゅうねん!」

 

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